こんにちは、エージェントセブン編集部です。
この特集企画では、編集部オススメの成長企業を紹介します。
今回は「オシロ株式会社」
https://osiro.it/
「日本を芸術文化大国にする」というミッションを実現するためのオウンドプラットフォーム「OSIRO」を開発・運営。熱量の高いファンと継続的な関係を構築できるサブスク型のコミュニティ専用サービスを提供し、2017年の創業以来大きな話題を集めています。
「OSIRO」が注目される理由は事業の独自性とともに、コミュニティの力でクリエイターが活動を続けていける世界を実現するというビジョンにあります。今回、世界でも類を見ないサービスで未来を見据える代表取締役社長の杉山博一さんにインタビューを実施。創業のきっかけに始まる同社のストーリーについて、たっぷりと語ってもらいました。
目次
【創業前夜】アーティストとしての挫折
杉山さんはもともと絵画を中心としたアーティストでした。30歳まで創作活動をしながらデザイナーとしても稼働。ところが、デザインの仕事は入ってくるものの、本来やりたかった絵画のほうでは一向に暮らしが成り立ちません。自分にかぎらず、日本では芸術を職業としていくのが非常に難しい環境であると身をもって知ったのです。
杉山さん
「アートだけで食べていくのは無理だと痛感しましたし、芸術を志す上での孤独も強く感じました。アートで生計を立てていくには、“応援団”がいなければ難しいことを実感したと同時に、芸術に勤しむ人がちゃんと食べていける世の中にならないか…という思いが芽生えました」
30歳でアーティストに自ら終止符をうち、32歳のとき金融サービスの事業を共同で起業。同事業を5年間やり遂げ、ニュージーランド(NZ)の人々や気候、風土が気に入ったことから日本と行き来する生活を始めました。まさに自由人だった杉山さんは、それまで一度も会社勤めをしたことがなかったと言います。
「自分の興味のあることしかできない人間だったから、会社員は無理でした。何より僕は、決まった時間に決まった場所に行くことがずっとできなかった人間で(笑)。でも、過去の自分と同じように芸術を仕事にすることを志しながら、叶わずに苦しい毎日を過ごす人は多くいる。そんな世の中を何とかしたいという想いは心のどこかにずっとあったように思います。そして、それは突然やってきました。」
【創業を決意】舞い降りた天命「日本を芸術文化大国にする」
芸術の夢を追いつつも果たせなかった経験から、NZのIT企業の日本法人立ち上げを経験しつつも、どこか心の奥底で気になっていたのかもしれません。「今も忘れない」という、まさに天啓が舞い降りたのです。
杉山さん
「本当に不思議なのですが、“おまえにはまだやることがある、日本を芸術文化大国にしなさい”というお告げみたいなものを感じ、断れなかったんですよね。まさにこれが天命でした。その意識が芽生えてから僕は、決まった時間に決まった場所に行けるようになったんです。生まれて40年間できなかったことができるようになった。マインドが100%、そのミッションへと向くようになりました。」
「これはもう、理屈では説明できない世界」と杉山さんは言います。潜在意識の中で長らく埋もれていた想いの顕在化。そして、サービスとしてカタチにしていくヒントは、自身が感じていた「創作活動には、お金と応援団が必要」という想いの具現化でした。
そこから日本に拠点を構え、自宅マンションの1室で開発開始。アーティストの活動を応援団=「コミュニティ」が支援していくための特化型プラットフォームの開発へ邁進していきました。それから約1年後の2015年末にβ版をリリースし、作家・アーティストの活動をコミュニティが支援するオウンドプラットフォーム「OSIRO」がスタートしたのです。
【コミュニティの定義】大事なのは「1対n対n」
「コミュニティ」とは、共通の価値観を持った人同士がつながる居場所のこと。OSIROはオーナーとメンバーだけでなく、メンバーとメンバーが交流し合うコミュニティをベースにしたサービスであり、だからこそ無限の可能性を秘めたプラットフォームといえます。そして杉山さんが考えるコミュニティの定義は、そのままOSIROのコンセプトに直結するものです。
杉山さん
「たとえば、創作活動を行う人が作品を買ってもらってお金を得る。そうした1対nのコミュニティだけではなく、大事なのはn対nの応援団同士が仲良くなること。そこに価値共創が生まれ、『1対n対n』の関係が成り立っていくのが、OSIROが強みとするコミュニティのスタイルです。メンバー同士のコミュニケーションが活発になることがとても重要なのです」
1対nだけではなく、n対nを含めた関係性の構築。それがベースにあることで、nとnのつながりは無限に広がります。
「OSIROのサービスを進化させていくにつれて、思っている以上にコミュニティにはとてつもないパワーを秘めていることがわかってきました。同じ熱量で自分の好きなことを話せる人と出会う場所って、ものすごく楽しいと思いませんか?クリエイターの孤独だけでなく、応援する側であるファンの孤独をも解消できる。OSIROは日本のクリエイティブ産業を変えるポテンシャルがあると確信しました」
【社会を変える】コミュニティの力が日本の幸福度を上げる
みなさんは、日本が先進国の中で幸福度指数が極めて低い国であることをご存知でしょうか。世界有数の経済大国になったにもかかわらず、国民たちが幸福と感じている度合いは非常に低いのです。一方で幸福度指数の高い北欧の国々をみたときに、実は意味深い指数があることに気づきます。
杉山さん
「近年サードプレイスの重要性が言われるようになりましたが、この“コミュニティに帰属する数”が、北欧の国は非常に多いという事実があるんです。日本の場合、コミュニティに帰属している数は1人あたり平均2.5個。かたや北欧の国は4.5個です。それなら、あと2個日本の人たちがそれをプラスすれば、もっと幸せになれると思いませんか?」
コミュニティに帰属する数を増やすことで、同じ想いをもつ人とのつながりが増え、自分の好きな世界観の中でいっそう活動できるようになります。まさにウェルビーイングの実践であり、幸福を感じられるかけがえのない場所になり得ます。杉山さんが「コミュニティはとてつもないパワーを秘めている」と感じる所以なのです。
「私はコミュニティを通じて、クリエイターも受け手も幸福な状態を実現できれば、日本の幸福度指数は必ず高まると思っています。今そこに最初にたどり着こうとしているのはわれわれだけです。こんな世界観をサービスとして事業展開していくのは、誰が考えても難しい。しかし、挑む山が高ければ高いほど燃えますよね。この高い山に挑戦しているのが、われわれオシロなんですよ」
【世界初の挑戦】難しい仕事だからこそ面白い
オーナーの様々な活動をコミュニティが応援していくための特化型プラットフォーム「OSIRO」をつくっていくための難しさ。それはどんなところにあるのでしょうか。
杉山さん
「まず、人と人とが仲良くなるという仕組みを解明して、それをサービスに落とし込むのが非常に難しいです。また、コミュニティを盛り上げることも難しいのですが、盛り上がることによってもまた、交流が活性化していくにつれて運営の負担も増幅していきます。そうした課題をクリアしていくために、コミュニティマネージャーAI化を実装し、日々進化させています」
今取り組んでいることは、コミュニティマネージャーの役割を可能な部分からシステム化すること。もともと、導入ハードルが高かったコミュニティ向けのシステム開発を、ノーコードで実現するなど高い技術力をもっているのがオシロです。テクノロジーが次のフェーズへと向かう今、社内のエンジニアの意欲もいっそう高まりつつあります。
「従来、エンジニアは多く存在しますが、ECや広告業界が成熟してきたこともあり、流れは変わってきたと思います。これからはコミュニティサービスが求められる時代であり、しかもOSIROはチャット、ブログ、グループ、イベント、ポイント、カートレスECなど全てのファンクションがひとつのサービスとしてオールインワンになっています。優れたエンジニアの人ほどきっと仕事が面白いはず。加えて、仕事の成果が世の中の幸せに直結することが彼らの高いモチベーションにつながっていると思いますね」
【オシロらしさ】ものすごく仲が良い、社員同士のつながり
「オシロで働く楽しさ」。それは仕事のやりがいだけに留まりません。コミュニティづくりをベースにする会社らしく、社内で大事にするのはやはり人と人のつながりです。
杉山さん
「会社が提供するシステムやサービスって、それをつくる側の考えや風土がそのまま反映されるんですね。会社の社員の仲が悪かったら、コミュニティで人と人が仲良くなるシステムなんて作れません。実際、当社の一番の良さは、まぎれもなく社員同士の仲が良い点、これに尽きます。休みにはみんなでドライブやキャンプに行ったり、集まって焚火をしたり。ものすごく仲が良いんですよ」
またオシロには、社員に野菜を配る「野菜給」や、「失恋休暇」などのユニークな制度が盛りだくさんです。そこには、杉山さんの会社づくりに対する想いが根底にありました。
「僕には子どもがいないので、社員のみんなが自分の子どもだと勝手に思っているんです。入社面接も、養子縁組くらいの気持ちでやっています(笑)。そして自分の子どもだったら当然健康でいてほしいと思うじゃないですか。だから無農薬野菜を食べて元気であってほしいし、もし失恋したら会社になんていっていられないから、『失恋休暇』を用意している。ほかにも、芸術文化に触れてもらうための『芸術給』などもあって、社員みんなそれぞれ興味のある映画や舞台を観に行って、月1回の全社会議で感想を発表しています」
【これからの新しい波】クリエイター向けから始めるサービスだから世界でNo.1になれる
杉山さんは創業以来、オシロは世界No.1の企業になれる可能性を秘めていると確信しているそうです。それは、歴史が証明してきた確かなエビデンスがあるからです。
杉山さん
「いま世界でNo.1に輝く企業は、クリエイターに向けたサービスで創業されています。SaaSのトップのアドビや、世界で最も高い企業価値をもつAppleなどを見てもそう。クリエイター向けから事業展開をしてきた企業は、いずれも世界一になっています」
そして今、オシロにも新しい波がやってきています。世界一のメーカーをはじめ、日本を代表する企業がOSIROのコミュニティサービスを導入。クリエイター向けにスタートしたツールは、今やトップオブトップの企業やブランドが使ってくれるまでになったのです。
「今後、OSIROのコミュニティが世の中に与えるインパクトはいっそう大きくなる。そんな波が来ていることを実感します。この波にきちんと乗っていけば、世界でNo.1の企業へ成長することも可能だって本気で思っていますよ」
【オシロが創る未来像】「コミュニティ経済圏」で幸福を生み出す
2023年2月、あるニュースが業界で話題になりました。電通グループが、NFTを使ったファンコミュニティ形成を目指す新事業の実証実験に、OSIROを活用すると発表したのです。これはオシロが目指す、「コミュニティ経済圏」を創る未来像へつながるものでもあります。
プレスリリースURL:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000053812.html
杉山さん
「これからの時代、もう広告ではモノが売れづらくなると私は思います。大事なのは、買ってくれているコアなお客様をコミュニティ化すること。コミュニティ内では信用という土台の中で活動ができるので商いが生まれやすく、しかもお金とモノだけを交換する世界とは違った幸せや充足感がある。そこに次世代の経済圏が生まれると思うんです」
コミュニティ同士がつながり、多彩なコラボを生み出すこともOSIROのプラットフォームでは容易です。世の中に新たな価値を生み出すことがコミュニティでのマネタイズにも結びつき、同時にクリエイターの未来を変えていく強力な媒体になり得ます。
「クリエイターが自分の好きなことで生活の基盤をつくる。それが『日本を芸術文化大国にする』というミッションに近づいていく土台になります。その向こう側に幸福な社会が待っていることを多くの人たちに伝えたいし、誰もがその物語の登場人物になれるチャンスがある。一緒にチャレンジしてくれる人に、ぜひ仲間になってほしいですね」
<オシロ資金調達に関して(2023年2月28日時点)>
オシロはシリーズAラウンドとして総額5.15億円の資金調達を実施致しました。
▸PR TIMES:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000053812.html
▸資金調達特設ページ「クリエイティブ・コミュニティの時代へ」:
https://osiro.it/thxa