こんにちは。エージェントセブン編集部です。
この特集企画では、編集部おすすめの成長企業を紹介します。
今回は「株式会社Skillnote(スキルノート)」
同社のサービスである「Skillnote」は、ものづくりの現場の従業員スキルが「見える」「わかる」「活用できる」、クラウド型のスキルマネジメントシステムです。これを使うことで「人材育成」と「人材配置」を計画的に効率良くおこなうことができるようになります。また、ものづくりに特化したスキルマネジメントシステムは世界的にも珍しく、現在はグローバルスタンダードのクラウドサービスになることを目指し日々奮励努力されています。
そんな同社の強みは、機能面の充実もさることながら、デジタルに不慣れな人でも使える操作性。つまりユーザビリティが高いことがあげられます。そのような徹底的に現場にフォーカスした製品がいかにして生まれたのか。創業に至る経緯から、理想とする未来像についてまで、代表取締役の山川隆史さんに語っていただきました。
目次
【創業秘話】就職して経験を積み、10年以内に起業しようと考えた
早稲田大学 理工学部出身の山川さん。周囲は大学院へ進学する方も多く、就職組も教授の推薦で進路を決めるなか、ひとり熱心に就職活動をおこなったと言います。
山川さん
「仕事は一生のことだと考えていたので、自分は何をしたいのかを見極めつつ、商社に行ったりメーカーに行ったり、いろいろな会社を訪問しました。結果的には、自分の専門分野に一番近かった信越化学工業に入社しました。また、海外で仕事をしてみたいという気持ちがあったので、入社後一番早くに海外経験が積めそうな会社だったことも理由のひとつです」
「一方で、いずれ起業したいという思いもありましたが、当時はまだどういった事業で社会に貢献できるか見定められていませんでした。そこで、10年以内で起業することを目標に、まずは見聞を広め、経験を積むことが重要だと考えました。」
【会社員時代】製造業の競争力は「人」で決まると世界の現場で確信
入社後は工場で2年、技術営業として8年の経験を積むことになります。
山川さん
「工場では、製品の原価計算など数字に関わる担当者として約2年間勤務しました。その後、本社の事業部門に配属され、まずは提携していた海外メーカーの窓口となるコーディネータ業務を担当しました。世界の主要国に営業がいたので、各国との技術のやりとりや物流業務など、様々な経験をさせてもらいました。そこでの経験を経て、半導体関連の製品担当として技術営業をするようになりました。」
つねに技術革新の波が立ち上がる、最先端の電子材料の世界。山川さんは、今あるものを売るのではなく、3年程度先を見据えながら、お客様が描く未来と自社の研究所の橋渡し役となり、新たな製品開発をおこなっていきました。そこでは海外メーカーとの仕事が多く、グローバルメーカーの躍進を目の当たりにします。
「1990年ごろは日本の半導体が世界シェアの5割以上を占めていました。私は2000年ごろから半導体業界に関わるようになりますが、すでにインテルが世界のトップを独走し、サムスンなども強くなってきた時代です。日本メーカーのシェアが落ちていくのをずっと見てきました。」
日本メーカーに対する寂しさを感じながらも、インテルやサムスンとのビジネスに力を注ぐ。そんな相反する感情のなか、彼らの強さの要因が見えてきました。
「私の主な担当先がインテルでした。世界中にある彼らの研究所や工場に行きましたが、品質管理の方法からミーティングの方法に至るまで、あらゆる場面で仕組みが共通化され徹底されていました。特に人材育成の仕組みがシステマティックに管理運用されていたことには大きな影響を受けました。」
当時、日本の大手メーカーも似たような仕組みを導入していたようですが、インテルほどグローバルでの徹底はされていなかったと言います。また、インテルのように細部まで仕組みを共通化することで、国に関係なく、良いものはグローバルで採用するという社風が、強さの源泉になっていると感じたと語ります。
山川さん
「製造業の競争力は、“人”で決まると思っています。モチベーションが高く、人が成長する環境でないと、事業で勝つことは難しい。よく言われる“企業は人なり”です。そこに気づいたとき、製造業の人材育成を支える仕事なら、一生を通じてやっていきたいと考えました。」
【Skillnote誕生秘話】将来を見据えた「人材育成」と「人材配置」をソフトウェアで
そこで山川さんは、2006年3月に製造業の人材育成を支援する会社を創業します。主に技術系の共通スキルに関わる教育を、大学教授の方などとともに「研修」の形でおこなうというものでした。初期投資が少なく始められるものの、労働集約型のビジネスモデルであり、クライアントの要望を聞くほどに汎用性がなくなりコストもかかるなど、いろいろと苦労したと言います。
山川さん
「あるとき、某国内メーカーの技術系の方が、『今うちのエンジニアたちがどんなスキルをどれくらい持っていて、どこが強みで、どこが弱いのかを把握したい。その上で、強みを伸ばし、弱みを補う。それこそが戦略的な人材育成だ』と、仰ったのです。
確かに、社内にあるスキルや技術の状況が一目でわかり、そこに対して何かアプローチできることは大事だと思いました。しかも、それをソフトウェアで実現できれば、あらゆる製造業に持っていくことができる。さらには、グローバルに通用するものができると思いました。」
会社員時代、3年先を見据えながら技術営業をしていたのと同じく、将来を見据えた「人材育成」と「人材配置」が管理できるソフトウェア というわけです。ソフトウェア製作は未経験だった山川さんですが、そこから試行錯誤をしながら開発をスタートさせました。
【開発の苦労】良いエンジニアを獲得することで状況が変わった
山川さん
「今思えば無茶苦茶ですが、ホームページをつくる感覚で知り合いの知り合いを紹介してもらいながらつくっていました。パワーポイントで製品構想や画面イメージを作成し、こんなものをつくりたいと外注していました。」
慣れないソフトウェアづくりは時間もコストもかかり、そのやりくりで手一杯だったと言います。ゴールの見えない毎日。そこには、製造業での経験が裏目に出たという経緯がありました。
「製造業に長くいたので、機能の揃った完成品の提供が前提であり、一部機能しか実装されていない段階のものを買ってもらえるとは思ってもいませんでした。しかしあるとき、一緒にやっているメンバーが現段階のものでもプレスリリースを出して、世の中に問うてみようと提案してくれました。そうしたら10社くらいから引き合いがきまして。しかも、名だたる大手企業からも声がかかりました。当時は製造業の固定概念が自分の中に強くあり、ビジネスとしては裏目になっていたと気づきました。そこからは徐々に利用していただく企業も広がっていきました。」
一方で、開発の体制は決して盤石ではなかったと言います。
会社が大きく変わったのは、開発エンジニアの安藤さんがメンバーになってからでした。これまでツギハギでつくってきたプログラムを引き継ぎ、ゼロからつくり直したことで、技術を完全にコントロールできるようになったのです。安藤さんは「ゼロから製品をつくり直し、“未来の製品”に自分の手で変えていく」ところに興味を持ち、開発を担ってくれたのだと言います。
結果として、次々に舞い込む引き合いに対しても、しっかりと対応できるような体制が整ったそうです。
「エンジニアが一番重要なことはわかっていましたが、当時は良い人材を採用することはとても難しかったです。しかし、安藤のような経験豊かな人材が入ってくれたことで開発体制の強化に取り組むことができ、現在は社員のなかで開発エンジニアが大多数を占めるようになりました」
【選ばれる理由】工場での経験が生きた誰でも使えるユーザビリティ
製造業出身である山川さんは現場第一主義。それは「Skillnote」という製品の特徴にも表れています。というのも、同クラウドサービスを導入しても、製造現場のスタッフが継続してデータを入力してくれないと、上層部が分析したいようなデータが得られない側面があるからです。そんななか、「Skillnote」は利用継続率99%という高さを誇っています。そこには工場勤務時代に培われた経験が活かされていました。
山川さん
「製造現場では、パソコンを使い慣れていない方も少なくありません。そうなると直感的で使いやすいUIがとても大事で、1画面ですべて完結させるなどの工夫が必要です。現場の風景をありありと想像できたのは、工場勤務時代の経験によるものです。もしあの2年間がなければ、まったく違う製品になっていたと思います」
【バリュー】すべての判断基準は「誠実」であるかどうか
そんな山川さんが働くうえで、人を採用するうえで大切にしていることがありました。
山川さん
「会社で定めたバリューのなかで、一番大事にしているのは“誠実”であることです。社会人経験をしてきたなかで、どこかでインチキをするとしっぺ返しがくることを数多く見てきました。“誠実”であることは、お客様に対しても、自分に対しても、仕事に対しても、採用に関しても、すべての判断基準になっています」
“誠実”であることをモットーに会社を経営されている山川さん。社員も徐々に増えるなか、将来的にどんな会社にしていきたいかを最後に聞きました。
「弊社は、“つくる人が、いきる世界へ”をビジョンに掲げています。製造業で働くすべての人がいきいきと、成長実感を持ちながら、高いモチベーションで仕事に取り組める状態をつくっていきたいです。そのためには、株式会社Skillnote自体もそういう会社でないといけないと思っています。スタートアップである当社に飛び込んでで共に挑戦してくれている社員には、いきいきと働いてほしいですし、どんどんと成長もしていってほしいと思います」